保志圭治は自分の家にいた。
そして悩んでいる。
自分に与えられた武器、そしてそれがあまりに自分「らし」すぎることについて。
「・・・・ビームかよ」
しかも右手の人差し指から、何とも言えない色の光がでる。
CGみたいだ。
「やぁーーーー」
光は前にあった椅子の脚に当たった。
すぱっと嘘のように斬れた。
かなり強力。
さっき間違えて左手かすってだいぶ痛いし。ずきずきするし。
ばたん
玄関のドアが開く音がした。
誰だ。
音を立てないようにして、机の陰に隠れた。
床のきしむ音が聞こえる。近づいてきているようだ。
同じ部屋に入ったのだろうか。
「けーじ?」
気づかれてしまった。
見上げると青木あやがいた。
「あーおまえかー」
「・・・ぅ・・・・・うう」
青木は泣き始めた。
「あんだよおまえ?あんで泣いてんの?」
「こ・・怖かったんだよぅ。独りでさ。朝の変な、放送はいるし」
「あーもー、気にすんなよ。朝ってあれなんだろ?もともと変な奴なんだろ?」
青木は嗚咽を抑えながら言う。
「ふ・・はは・・・そうだよね。殺し合いとか、嘘だよねっっ」
「んにゃ、そーでもないかも」
ほら、と言ってビームを出した。
「ふぇ?ななに今の?!」
もう完全に泣きやんでいる。
「俺の武器、みたい。ふたのついた瓶に『びーむ』って書いてあって、開けたら使えた」
「まじ?」
「うそついてどうすんだよ。お前は?」
「わかんない・・・・これかな」
青木は鞄の中に手を入れて30センチくらいの棒状の物を出した。
白っぽい木でできていて細かい細工がしてある。先端にはよくわからないモチーフ。ファンタジー漫画に出てくる魔法使いの杖みたいだった。
「あにそれ!あにそれ!かっこいいー」
保志は目を輝かせている。
「わかんない」
「魔法つかえそー」
「・・・ありえないでしょ」
そう言うと保志は、ん、と言って自らを指さした。
「ああ」
青木は杖を前に掲げる。
ふわん
光。白に青や緑が混ざった感じの綺麗な色。
光は杖から部屋に広がってきらきらと雪のように散っていった。
「おおー」
「綺麗」
「んー、でも何の意味があるんだろなー・・・・ん?」
保志は自分の左手を見た。
ずきずきが消えている。
「どうしたの?」
「痛かった左手が治った。」
「まじ?魔法の効果??」
「じゃん?」
* * * * * * * *
小橋晋太郎は「武器」と書かれている『それ』の前で正座していた。
学校に近い民家。
もう夕方で外は暗いが、堂々と電気をつけるのは恐かったので窓の少ない部屋を選びスタンドライトをつけていた。
鞄のなかに『それ』はいた。
半透明で水色のぶにぶにしたもの。
この丸い2つは目だろうか。だとしたらなかなかかわいらしいと思う。
海の生き物っぽい。
生きているんだろうか。
もう何時間もにらめっこしている。
「んーーー」
疲れた。
何か食べよう。
鞄のチャックを開け、パンを探す。
「・・・しんたろ」
小さい声で誰かが読んでいる。
とっさに身構える。
部屋を見回す。
人の気配は全くない。
「おーい」
また。
でも誰もいない。
・・・・・・・・。
聞き覚えのある声だな。
「おーいいい!!こっち!ここだってば!しんたろう!!」
声の方に振り向くと、『それ』がいた。
「え?!」
「あーやっとだー。気づくのおせーよ」
「ええええええ!!!!」
しかも・・・この声
「いたる先輩??!」
「うん」
「ななな!!とうとう人じゃなくなったんですか!!!!!?????」
「ああああああ!!!!!落ち着けよ」
「なにいってんすか!無理ッスよそんなの。なんで半透明なんですか!!まんぼうになったんですか!!!水族館につれてったほうが」
「なーなんでこんなんだろうなー。とりあえず乗り移れそうなのがこれしかなかったの」
「の?のり???」
「そ。もう死んでるから。幽霊って実在できるんだな」
「しし死んじゃったんですか先輩?!」
自らを浅田極であると名乗った『それ』はぐにぐにしながら説明した。
山田園と森田美里と一緒にいて、気づいたら3人とも民家で倒れて死んでいたこと。
包丁を拾った記憶はあるけどその後一切覚えていないこと。
やっぱり他にも死んじゃって意識だけがうろうろしている人がいること。
「信じがたいですね・・・」
「じゃあなんでしゃべってんだよ。しんじろよ」
「まあ・・・」
「あ、あと」
「?なんですか?」
「よしきには気をつけろ」
「へ?なんで」
「もうあいつもだめだ」
「?」
「人殺しだ」
「は?!」
「5人は殺してる。もっとかもしれないけど、瀬川と小倉と金城と浅野、あと沙也先輩。ここに来る途中でみた」
「そ、そんなのう」「嘘じゃない」
小橋と関口は仲が良かった。
部活の中、数少ない男子としてよく一緒にいた。
関口は武器とかが大好きで、モデルガンを集めていた。
遊ぶとき持ってきたりしていた。
でも
まさか
「あいつはもう、人殺しだ」
極先輩は言い切った。
念を押すように強く。
でも、まんぼうにそんなこと言われても何も感じない。
このすべてが冗談みたいな状況で何を信じろって言うんだ。
「まさか」
「言葉だけじゃ伝わらないし、信じてなんかくれないだろうけど本当なんだよ」
「事故とかですよきっとー。いくらあいつだって」
「事故で人殺して笑えるか?」
「え?」
「笑ってたんだよ。嬉しそうに。人が血をいっぱい出して死ぬのを見て」
「・・・・・」
「な?だからもうあいつに近づかない方がいい」
そんな・・・・・
「あ、水クレー」
うーわ空気読めよこの骨なしが。
「・・・先輩死んでるんじゃないんスか」
「こいつーこの体が水がほしいって」
「!気持ちわかるんですか!?」
「ま、いまは自分の体だし」
「うわーーーーー。はい」
鞄に入ってたペットボトルのふたを開けて差し出すとぐにぐにと飲み口を触っていた。
「ありがとー」
「どういたしまして」
ぐにん
半透明が動いた。
いつもより大きく動いた。
ぐにゃぐにゃと形を変え大きくなっていく。
「う、うわ」
最終的にヒトガタになった
「おおー前と同じ形ー」
現れたのは半透明の極先輩だった。
すげえー
でも
きもちわりいーーーーーーーーーーーーーーーーーーー