陽は完全に落ちて星も出ている。
7時、8時くらいかもしれない。
自分の携帯や、持ち物も含め、時計は全部バラバラの時刻を示していた。
だから空を見て想像するくらいしかできなかった。

「腹減った」
と秋本。
「同意します」
河野。
「・・・・ご飯にする?」
「「はい」」


* * * * * * * *

水谷めぐ、木村麻理、木村愛、鈴木美幸は夕食の準備をしていた。
近くにあった民家に勝手にあがりこんでいる。
シチューの缶詰を見つけたので、コンロで暖めていた。
「ねーねーごーはーんーまーだーあー?」
「水谷ぃっお前も手伝えよう」
「じゃんけん負けたの愛じゃんー」
「先輩ー私手伝いますよー」
「あーいーよいーよ麻理ちゃんは休んでて。見つけてくれたの麻理ちゃんだしさ」
「そうですかー?」
「そーそーそんなの馬鹿愛にやらせときなー」
「水谷ぃ」
「・・・・・・やっぱ水谷先輩動き方おかしいですよねー。異星人ですか」
「なっみゆきちゃんひどくない?」
「ほんとのことですもーん」
「ひどっっ」
愛がコンロの火を止め、鍋をテーブルへと運ぶ。
「できたよー」
声が嬉しそうだ。
「わぁい」
「くうくうーーーっっ」
水谷がスプーン片手に愛に近づき、鍋から直接シチューをすくう。
「あっこらぁ水谷」
愛がそう言うときにはもう水谷はシチューを飲み込んでいた。
「うめー」
「みんな我慢してるのに!」

かたん

水谷がスプーンを落とした。
「あーもーだめじゃないですかぁ、食器落としたら」
あきれたように言う美幸。
「・・・うるさい」
低く静かな声で水谷が言う。
「みずたに?」
「・・・・さいうるさいうるさいうるさい!!!」
「ど、なんですか先輩?!」
みんな椅子から立ち上がり、水谷から距離を取った。
水谷の様子が明らかにおかしい。
いつもへらへらしていて、だいたい笑っている彼女が、今は俯いて出したこともないような低い声を発しているのだ。
3人がおどおどしていると、今度はいきなりぶわんと顔を上に向ける。

目が、赤い。

「ふ、はははははははははははははははははは」
今度は甲高い声で笑い出す。
3人は壁に張り付くようにして少しでも距離を取ろうとする。
「みんな、みんなみんなさあ!!死んじゃえばいいんだよ!!!!そうだそうだよ!!」
自分の鞄に駆け寄り銃を取り出す。
「先輩!!??」「水谷い?」「みずたに先輩!!!」
ガチャガチャと適当に銃をいじっている彼女を止められるほどみんな落ち着いていない。
ただ彼女の行動を眺めているだけだった。
「うへへ」
満面の笑みで
自分のパートの後輩である
麻理の方に
銃口をむけ
ふふふ、と笑う。
「死んでね」
引き金を引く。


* * * * * * * * *


ぱあんっっ

3人は同時に反応する。
今日何度目だろう。
それでもこの音には慣れられない。

そして自然に視線はモニターに移動する。

ぴっ

「・・・近いよな」
「うん」
「行ってみる、か?」
「・・・行こう」
漁っていた台所の棚を開けっ放しにして、3人は民家を出た。


* * * * * * * * *


何度か銃声が聞こえて。

「・・・っ?!」
尻餅をついたままおそるおそる目を開けるとそこには2つの塊。
美幸ちゃんと麻理ちゃんなんだろうか。
紺色の制服が深いあかに染まっている。
目線を上げると親友の後ろ姿。
「うふ・・・ふふふふ」
手には銃。
銃口からは煙が上がっていて。
私の知っている水谷めぐではない。
思わず退く。
「あ」
その音で彼女は振り向いた。
私を見下ろす
真っ赤な目。
充血というか、もうむしろ白兎のようだ。
「・・・もう一人いたんだよねーさーやんなきゃー」
「み・・・」
「ふふふ・・・あははははははははははははははは!!!!!」
もう声も出なかった。

どんっと
鈍い衝撃。
どこをうたれたんだろ・・・。
もうだ・・・めだ・・・な。
あ・・れどあがあ・・た
だ・・・れ・・・・?


* * * * * * * * *


「愛ぃぃっっっっっ!!!!」
八角のモニターに従って場所を探して、
やっと見つけてドアを開くと愛が目を見開いて倒れようとしていた。
駆け寄って抱き上げるが、反応はない。
「お・・・前ッ」
水谷は愛と秋本
を見下ろして薄ら笑いで立っている。
「あっきもっとじゃーんっ。どうしたのさーこんなところで」
真っ赤な目。
小木と、同じ?
「なんなんだよ!!どうしたんだよ!!!!」
ドアから八角と川野が入ってくるのが見えた。
川野が目を見開いて、それからがくんと膝をついた。
八角は何とも言えない表情でこちらを見てから川野を抱きかかえるようにして部屋を出て行った。
「・・・むーん何だって言われてもねえ」
「ふざけんなよ!!!俺ら腐ったって仲間だろ!?しかも愛とか仲良かったんじゃねえのかよ!!」
「むーんうるさいなあ」薄ら笑いだった口をとがらせて言う。
「うるさいじゃねえよ!!!」
愛を床にそっと寝かせて、立ち上がる。
のんきな口調でいる水谷。
「ああ!!もう時間じゃん。ごめーん秋本!」
そう言うと自分の持っていた銃を自身のこめかみに突きつけた。
「え?・・・な・・何を」
「じゃあね」
にやりと笑うと水谷は自分を打ち抜いた。


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