秋本ははじめにいたところに近い林の中にいた。
坂になっていておりきったところには神社があった。
なんだか怖い名前の坂だった。
神社は不気味だったから、できるだけ見えない場所を探し、崖に近いところに座った。
平面の場所に座りたかったけど、中学校のテニスコートのフェンスがあって坂に座る状態になった。
でもそこが一番安全に思えた。
がさ
音がした。
短刀を握りしめて、動かないようにした。
音はだんだん近づいてきている。
逃げる時間はなさそうだ。
「しょうさん?」
少し震えた声だった。
制服。メガネ。肩くらいの長さの髪。
川野ありさだった。
武器はもっていない。
いつもどうりだった。
刀をおろす。
「何だ、ありさか」
川野も安心したようで膝からがくっと崩れた。
相当疲れているようだった。
「よかったぁ・・・しょうさんは狂ってないんだね」
「うん」
「・・・・ねぇあれ見た?」
「あれ?・・・・学校?」
「そう」
「・・・うん」
「血?」
さっきのことを思い出した。
頭が痛くなってきた。
気持ち悪い。
そのまま黙ってしまった。
「・・・・そっか」
ありさは理解したようだった。
「こんなの、本気になる人なんていると思わなかった」
「・・・ん、ああ」
小田のことは言わない。あの血の主も教えない。
自分だってまだ処理しきれていないのに、言えない。
ばしんっっっっ
2人同時にコートを向いた。
部長?
「小、木?」
川野と同じ女子の制服。
乱れてぐしゃぐしゃになっているひとつしばり。
手には、
赤く光る印のある包丁。
「殺してやるっっ!!!!!」
瞳は真っ赤で、どう見たって普通じゃなかった。
* * * * * * * *
小木海郷は中学校の特別教室棟とプールとの間にある花壇に座っていた。
「・・・バトロワかぁ」
遠くからなんだかすさまじい音が聞こえる。
殺し合っているのだろうか、本当に。
手の中のフォークを見る。
武器って・・・食器・・・ひどいなあ朝ちゃん。
「んー。これで身を守れと」
顔を上げる。
「ん?」
10Mくらい離れたところに、何かを見つけた。
近づいてみるとそれは包丁だった。赤い印のような物が光っている。
一応、あったほうがいいな。
しゃがんで包丁を手に取る。
少し眺めた後立ち上がった。
そこで小木の動きは止まった。
「殺してやる」 と 、呟いた。
そうだそうだよ。殺るんだ。
何でもいい誰でもいい。とりあえず殺すんだ。
小木は走り出した。
無重力になったように体が軽く感じた。
小さな物音。
耳がさっきより良くなっている。
テニスコートだ。フェンスの方に誰かいる。
ばしんっ
そこには2人の人間。
男、女。
・・・どうだっていい。
殺すんだ。
「お、ぎ?」
女の方がいった。
意味なんて知らない。
どうだっていいんだ。
「殺してやるっっ!!!!!」
* * * * * * * *
八角は走りながらモニターを見た。
赤い点が2つの青い点に近づいていった。
* * * * * * * *
叫ぶと小木は蜘蛛のようにフェンスを上り始めた。
「え?お」
「おい!!逃げるぞ!!」
秋本は鞄を背負って川島の腕を掴んだ。
「え・・・あ」
少しぼうっとしていたが、すぐに元に戻って鞄を持った。
遅かった。
小木は一番上までたどり着くと、そこから飛び降りた。
何カ所からか血が出ていた。
「うあああっっっ死ねえ!!!」
腕を振り回す。
包丁は秋本の顔をかすめて草を切った。
逃げ道を探すが、横は急な坂、前には小木。
後ろに逃げるしかない。
道は狭い。
一人ならいいが二人でダッシュするのはむりだろう。
戦うしかないのか。
鞘から刀を抜いた。
「しょうさん!?」
「正当防衛。」
「じゃ、じゃあわたしも」
「ありさは逃げてよ。今からじゃ間に合わない。共倒れだ!俺が部長止める!!」
「う・・殺されんな!!」
「おう!できれば人をよんで!できるだけ信よ」
ひゅんっと風を切る音。
速っ
「殺す殺す殺す」
うわあーマジこええ。やべーよこいつ。どうしちゃったんだよ!!
「殺す!!」
刀で抵抗しようとしたが、間に合わなかった。
相手はもう振り上げている。
ーひゅぅっ
もうだめだ。
思わず目をつぶる。
ん?
目を開けた。無事だ。
包丁は地面に刺さっていた。
前の小木の目は普通に戻っていて、しばらく宙をみていた。
少ししてこちらを向いた。
「しょうさん・・・かあ
ごめんね」
全身の力が抜けたようで崩れるように倒れ、そのまま坂の下へと転がり落ちていった。
なんだったんだ。
「だいじょうぶ?」
自分より上から声が聞こえた。
八角だ。
「ん、あ・・うん」
包丁の印はまだ怪しく光っていた。
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